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いずれにしても、生態系の循環メカリズムから「湖沼は、小宇宙である。」と言われるように湖沼問題は、地球環境問題、あるいは宇宙環境問題の縮図である。また、その取り組みは、一地方とか、一国単位あるいは一大陸にとどまらず、もっと国際的、できれば地球規模で取り組むべき事案であることを証左していると言えよう。
(2) べースとなった地方自治体での取り組み−滋賀県の事例−
湖沼の汚染問題は、日本最大の湖である琵琶湖においても例外でなく、70年代におけるわが国の社会経済の急速な伸展や変化に伴い、滋賀県内でも人口の急増、生活様式の変化、産業活動の活発化などが進行し、それらの影響を受けて琵琶湖および周辺の生態系のバランスが崩れ、水質は、急激に悪化の傾向をたどることとなった。
一つには、そのような事態を阻止するため、滋賀県では、1979年10月にリンを含む合成洗剤の使用禁止などのほか、世界で初めての窒素とリンの排水規制などを内容とした「琵琶湖富栄養化防止条例」(略称)の制定を始め、厳格な環境アセスメント制度など各種の環境政策が総合的に展開された。
二つには、滋賀県は、それらの政策をより確実に展開していくため、1984年8月には、第1回世界湖沼環境会議を開催した。また、その際に当時のUNEPトルバ事務局長から?国際的な連絡組織の設置?湖沼環境問題に関する国際会議の定期的開催が提唱された。それらを受けて、1986年2月には、「国際湖沼環境委員会」(略称「ILEC」)を設立し、1986年から世界湖沼会議を隔年開催することとなり、種々の情報、技術、人脈などを保有し、以降の琵琶湖管理に参考となり、役立ってきた。
ここで、ILECの組織を紹介するとユニークなのは、「科学委員会」であり、寄付行為に根拠規定があり、設置の規約を制定している財団の諮問機関である。メンバーとなる委員は、5大陸を中心に科学委員会総会で推薦、決定され、3年の任期で無報酬であるが、財団からの諮問に応ずるほか、科学的事項について、調査・審議し、助言を行うことができることとなっている。1987年9月の発足当時には、12国1機関15名であったが、現在は、15国1機関の18名に及ぶ学者、研究者、行政官から構成されている。(注 1機関とは、UNEPであり、開発途上国からの委員は、約半数である。)

 

 

 

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